子供の連れ去り事件は、昼間の住宅街で知らぬ間に発生していることも多いという。実際に連れ去られそうになったという経験談を紹介する。
「あの日の恐怖は昨日のことのように覚えています。当時私は小学4年生。友達が学校を休んだので、プリントを届けに行く道中でした。午後3時頃のことです」
会社員のTさん(48才)は、自らが連れ去られそうになった経験を話してくれた。
「私の家から友達の家までは、左に古い住宅が連なり、右に塀がところどころ壊れた空き地が続く坂道でした。車がようやく1台通れるかという細い道です。空き地には木が生い茂り、冒険ごっこをして遊ぶ男の子たちもいました」
しかし、その日は誰もいなかった。不審者は、この瞬間を見逃さなかった。
「私が坂道を歩いていると、30mほど先の坂の下から、高校生か大学生くらいの、若い細身の男が歩いてきました。なんとなく嫌な予感がしたので、うつむきながら、坂道を走り抜けようとしました。ところが、男とすれ違う瞬間、私はガバッと腰から抱き上げられてしまったんです。びっくりして声も出ませんでした。
でも、ハッとわれに返り、無我夢中で暴れると、男の腕をすり抜け、前方に転げ落ちました。ラッキーでした。振り返ると、男が私を見下ろしていました。その目が本当に恐ろしくて、とにかく前だけを見て夢中で坂を駆け下りました」
その後、友達の家にプリントを届けると、別の道から無事に帰宅できたという。すれ違いこそ“魔の瞬間”だと、安全生活アドバイザーの佐伯幸子さんは忠告する。
「すれ違いざまは、不審者が子供といちばん接触しやすいタイミング。嫌な予感がしたら、その直感は当たっていると思った方がいい。その時点で引き返すことを、お子さんに教えてください」
※女性セブン2018年8月2日号