有名ブランドのロゴなどを勝手に使用したカジュアル衣料の一部を「ブート品」と呼び、パロディ作品でありカスタマイズ商品だと言って売買する人たちがいる。しかし、そもそも「ブート」とは海賊版(bootleg)という言葉に由来しており、商標法違反の偽ブランド品だ。そういった海賊版の知識がない若者を相手にブート品と称するものが路面店だけでなくフリマアプリでも売買されている問題について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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「レトロな感じで一周回っておしゃれな感じ。半年前にメルカリで一万円で買ったけど、今はもっと値段が上がっている。古着だから希少価値も高いし……」
こう話すのは、高級ブランド「グッチ」のロゴが入った古めかしいTシャツを着た女子大生。東京・表参道からわき道にそれた、アパレル店や雑貨店が並ぶ通称「キャットストリート」を歩く彼女が着ているのは、実は、グッチが十数年前に出していたアイテムの「古着」ではなく、十数年前に海外の業者が作ったれっきとした偽物。要は「まがい物の古着」なのだ。
7月、警視庁は「ブート品」と呼ばれるトレーナーやTシャツなどを扱う、都内の古着店業者を商標法違反の容疑で逮捕した。先の女子大生は「ファッションなのにありえない」と警察への憤りを隠さないが、そもそもが偽物だ、と説明すると返す言葉に困った様子。
「違法・密造」といったニュアンスの「ブート品」。1980年代にアメリカで作り始められた「偽ブランド品」がその発祥とされているが、その有名製造元は1990年代初頭に廃業。ところが近年、本家の有名高級ブランド自身が、その海賊版をほうふつとさせるポップなデザインのアイテムを発表したことにより、皮肉なことに、かつて流通した偽ブランド品が巷では高値で取引される事態となっている。もっとも、高級ブランドによるポップなデザインの品々は、高級ブランドらしくしっかりした品質のものだが、ブート品と称して売られている偽物は海賊版らしい程度の質しかない。
しかし、前述の女子大生のように価値があると信じて購入する人は後を絶たず、そしてブート品が「違法」であるという認識を持つ人は少ない。知ったところでファッション、オマージュといった言葉を用い、どうにか所有や着用を正当化しようとする。