巨人軍には、スター選手に関する不祥事ほど寛大に接する「伝統」がある。巨額の借金も肩代わりするし、破廉恥事件も穏便に済ます。そんな伝統の“源流”が40年前に起きた「巨人軍史上最大のスキャンダル」であると見る関係者は多い。
日本球界の「巨人至上主義」を一貫して批判してきたスポーツジャーナリストの玉木正之氏もその一人だ。
「特定の選手だけを醜聞から守るという歴史は、1978年の『空白の一日』が契機になったと思います」
この年のドラフト会議前日に起きた江川卓の入団を巡る大騒動の経緯を知る人は多いだろう。ドラフト制度の“抜け道”を強引に突破してスター選手を“ドラフト0位”で手に入れようとした「球界の盟主」の手口の醜さと狡さは社会問題に発展した。玉木氏が続ける。
「『空白の一日』は、巨人の傲慢さの原点にあると同時に、メディア企業が野球チームを所有する弊害を示した事件と考えています。
メディアがスポーツに強大な影響力を持てば、“ルールを都合良く運用すればいい”と錯覚を持ち始める。そのメディアの影響力が大きくなれば、所属選手の問題行動が発覚しても報道が矮小化されかねない。他のメディアも“お仲間”だけに批判しにくい空気が生まれていく。でも、もうそんな時代ではない」
そうした伝統は、巨人軍というチームにとってもマイナスに働く──そう指摘するのは巨人軍OB会副会長も務めた球界のご意見番・広岡達朗氏だ。