戸別収集方式の場合は表札と同じですから、不安もないでしょうが、開放型の集積所方式で、さらにゴミ袋が透明だと中身がわかってしまい、プライバシーが損なわれる心配も当然です。また、住民の不安の程度は収集方式等によって違ってきます。
誰もが不安を感じるような収集体制の下で、名前を書かないゴミ袋を回収しないとすれば、ゴミ収集という自治体の責任から疑問を感じます。しかし、当該自治体は「お願い」というのですから、回収を拒否するのではない上、プライバシーは万全の権利ではありません。プライバシーとして保護しなければならない個人の利益と、ゴミ出しの状態を調査する必要性や社会的意義を比較衡量し、どちらが上回っているかで判断されることになります。
よって、自治体の実態により、ゴミ分別などのルールが地域社会に定着するまでは、名前明記もやむを得ない場合もあると思います。
住民は市町村のゴミ収集の清掃事業に対する協力義務がありますので、自治体からゴミ袋に名前を書くことを「お願い」される程度は受忍限度内でしょう。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2018年8月10日号