当たり前のことだが、患者に処方される薬は、医師の判断によって決まる。医師には患者が飲む薬を決める“権限”があるのだ。
だからこそ、医師と製薬会社との間には中立性と客観性が必要になる。製薬会社から医師に何らかの利益が供与されていれば、「見返りとして、特定の薬を患者に処方するのではないか?」との疑念が生じる。
2013年には「ディオバン事件」が発覚した。この事件では、製薬会社ノバルティスファーマが複数の大学の研究室に巨額の奨学寄附金を投じる一方、これらの大学が行なった臨床研究のデータが試験薬ディオバンに有利になるよう改竄された事実が指摘された。
このとき医師と製薬会社の関係が問題視されたはずだったが、5年経った今もその実態はいまだ明らかになっていない。
そこで、医療情報の公開を進めるNPO法人・医療ガバナンス研究所とジャーナリズムNGO・ワセダクロニクルは共同で「製薬会社71社から謝礼をもらった医師とその金額」について、各社の情報を集約した。
調査対象は、日本専門医機構が基本領域と定める18領域の学会のうち、2016年1月から2018年4月までに理事(監事なども含む)を務めた405人。調査責任者で、医療ガバナンス研究所の尾崎章彦医師(常磐病院外科)が指摘する。