「夏バテは単なる肉体疲労と思われがちですが、正確には脳の疲労、自律神経の疲労なのです」
そう語るのは、高齢者医療にも詳しい疲労回復の第一人者、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんだ。正しい夏バテ対策は自律神経を酷使する行動を避け、労わること。しかし意外に勘違いしていることも多いようだ。
「いちばんの夏バテ対策は質のよい睡眠です。そのため、熱帯夜のときは、エアコンはつけたままに。高齢者に冷えすぎはよくないと、タイマーで数時間後に止まるようにするのはNG。気温が上がれば眠っていても自律神経が働いて汗をかきます。寝苦しさで何度も目覚めて眠りの質が悪くなったり、逆に気づかぬうちに脱水や熱中症になる恐れもあります。タオルケットなどで冷えすぎを防ぎながら、朝までぐっすり眠れる環境がベストです。
また規則正しい生活は大切ですが、高齢者の場合は目覚まし時計の大きな音で無理に起きるのではなく、自然に目覚めるのが理想的。体調のよい平常時の睡眠時間を覚えておいて、朝食など朝の予定から逆算して就寝すると、生活リズムが整います」(梶本さん、以下「」内同)
早朝の散歩や運動も、健康的なイメージがあるがNGだ。
「高齢者にとって朝は、血液がドロドロで脳梗塞や心筋梗塞、突然死などのリスクがもっとも上がるとき。さらに目覚めてから自律神経がしっかり動き出すまでに時間がかかりますから、無理に体を動かせばリスクは急上昇です。目覚めたらすぐに床を出ず、軽く伸びをする程度から動き始めるとよいでしょう」
夏バテによい食べ物というと、うなぎや焼肉など栄養たっぷりのスタミナ食が浮かぶが、これも大きな勘違い。
「これは戦後の栄養状態の悪かったときの古い情報。むしろ脂の多い食べ物は消化が悪く、その分、自律神経に負担がかかります。また栄養ドリンクもカフェインの覚醒作用、微量のアルコールによる興奮作用、糖分による血糖値の上昇などで、一時的に“元気になった”気分になるだけ。疲労の根本的な改善にはなりません。
食べ物で夏バテ対策をするなら鶏胸肉やかつお、まぐろなどがおすすめ。これらに多く含まれるイミダペプチドは、今のところ唯一疲労回復効果が実証されている成分です。毎日、摂る必要があるので、サプリメントを利用するのもよいでしょう」
そして入浴も注意が必要だ。
「熱い湯につかって大汗をかくというのは危険です。汗をかくとサッパリするイメージがありますが、このとき自律神経はフル稼働。のぼせたときには悲鳴を上げているわけです。入浴はぬるめの湯で半身浴か、サッと入って汗を流す程度に」
※女性セブン2018年8月9日号