梅雨明け早々猛暑続きで、すでに夏バテに喘ぐ人も多いはずだ。なかでも、危険にさらされているのは高齢者だ。
私たちはまだ「暑くて寝苦しい」「だるい」「のどが渇いた」と切に感じて対策を取ることができるが、高齢者は自分がバテていることにさえ気づきにくいという。
高齢者医療にも詳しい疲労回復の第一人者、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんに聞いた。
◆夏バテとは自律神経の疲弊 まずは体の声を聞いて
猛暑の中、大汗をかきながら活動して一日を終えると、とてつもない疲労感に襲われる。食欲もなくやる気も出ない。夏バテだ。
「夏バテは単なる肉体疲労と思われがちですが、正確には脳の疲労、自律神経の疲労なのです」と語る梶本さん。
体が疲れて動きたくないと感じる。それこそが脳の自律神経のなせる業なのだという。
「自律神経は脳の中央、視床下部と前帯状回と呼ばれる場所にあり、内臓の動きや血流をコントロールする司令塔。
たとえば心臓を動かしたり、血管を収縮させて血圧を上げたり。物を食べると胃腸を動かして消化させ、体内の酸素の量が足りなければ呼吸を早めたり大きくしたり、体温が高くなれば汗をかいて下げようとする。環境変化に適応し、人の生命活動を維持する重要な機能を司っているのです。
外気が高温になる夏は、体温を安定させるために自律神経はフル稼働し、疲弊します。でも生命維持のためにダウンするわけにはいきませんから、これ以上、自律神経を酷使しないよう、脳が体に疲労を感じさせ、意欲も喪失させ、活動させないようにする。これが夏バテの正体です」
暑い日に、消化のよいさっぱりしたものが食べたくなるのも、消化活動がもたらす自律神経への大きな負担を避けるための自衛反応だという。
「この自律神経を休めるには、睡眠しかありません。睡眠中にも心臓をはじめとする内臓を動かし続けますが、それ以外の活動は休止するので、唯一の休息時間なのです。
ただ、熱帯夜で寝汗をかいたり、寝つけなかったり、高齢者に多い夜間頻尿などで睡眠が妨げられれば、自律神経は休まりません。
夏は自律神経にとって過酷な環境なのです。体の疲労を感じるのは脳からのSOSです。その声に素直に従い体を休めるようにしましょう」