ビジネス

最後まで食べ切りたい人向け、カレー専用スプーンがヒット

予想を上回るヒットとなった「カレー賢人」

 皿の最後に残ったカレーが、なかなかすくえない!…と、そんなに目くじらを立てるほどではないが、誰もが一度は感じたことのある、あのイライラを解消し、おいしく食べることに心血を注いで作られたのが、山崎金属工業のカレー専用スプーン『カレー賢人 キャリ(右)/サクー(左)』(1350円)だ。

 タイプの異なる2つのスプーンが、カレー大好きな日本国民をストレスフリーにする!

 日本の国民食ともいえるカレーをもっとおいしく食べるためのスプーンを開発できないか―金属産業で有名な新潟県燕市にある洋食器メーカー山崎金属工業が、そんな思いから作ったのが2種類のスプーン『カレー賢人』の“キャリ”と“サクー”だ。

 2016年の秋、開発担当の中村雅行さんはカレースプーンについて市場調査を開始した。場所は東京にあるカレーの聖地、神田神保町。カレー専門店が多く集まるこの地で有名店を何軒も巡り、どんなスプーンを使っているのか、スプーンについて不便なことはないかなど、店員に話を聞き歩いたのだ。

 そんななか、年に1度、『神田カレーグランプリ』なるイベントが開催されることを耳にした。中村さんは、このイベントに来場したカレー愛好家たちにも意見を聞いてみようと思った。会場で多く聞かれたのは、「皿のカレーを最後まできれいにスプーンですくって食べたい」「最近のカレーは具材が大きく、一口で食べられないときはスプーンで切り分けたい。その際に具材が転がったり、ルウが跳ねたりしないスプーンがほしい」というものだった。そんな意見をもとに、長年培った技術力を生かして、形が異なる2つのスプーンが誕生した。

『カレー賢人』のうち“キャリ”は、スタンダードな形のカレースプーン。ルウ、具材、ライスがおいしく食べられる絶妙な比率ですくえ、カレーを口に運んでから抜くまでの一連の動きがなめらかに行える。

“サクー”の方は、左右非対称の形をしており、先端のヘラの部分でじゃがいもやカツといった具材をサクッと割くことができる。実は、洋食器業界では、左右非対称のスプーンというものは滅多にない。

バランスが悪く、置いたときに安定しにくいからだ。“サクー”は、低い角度で口の中にカレーを流し込めるようにするため、先端が右肩上がりになっているだけでなく、スプーンのいちばん深い底の部分が、中心線よりわずかに左にずれている。

 実は金型を作る時、職人から「中心がずれているけど、本当に大丈夫?」と何度も心配されてしまったという。中村さん自身、本当にこの形でいいものかと不安を抱えながら、2017年8月、ついに2つのスプーンは発売された。

 結果は予想を上回るヒット。当初、年間3000本ほどの売り上げを見込んでいたが、売上本数は発売1か月で6000本を達成。

 タブーを覆し、カレーの食べ手が求める商品を作ったことが功を奏したのだ。カレー好きへのプレゼントとしての需要も多く、今年3月には欠品が出たほど。あなたの身近なカレー好きも、すでにマイスプーンとして持ち歩いているかもしれない。

※女性セブン2018年8月9日号

関連キーワード

トピックス

東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
津波警報が発令され、ハワイでは大渋滞が発生(AFP=時事)
ハワイに“破壊的な津波のおそれ” スーパーからは水も食料品も消え…「クラクションが鳴り止まない。カオスです」旅行者が明かす現地の混乱ぶり《カムチャツカ半島地震の影響》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
牛田茉友氏はNHKの元アナウンサーだったこともあり、街頭演説を追っかける熱烈なファンもいた(写真撮影:小川裕夫)
参院選に見るタレント候補の選挙戦の変化 ラサール石井氏は亀有駅近くで街頭演説を行うも『こち亀』の話題を封印したワケ
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン