梅雨明け早々猛暑続きで、すでに夏バテに喘ぐ人も多いはずだ。なかでも、危険にさらされているのは高齢者だ。私たちはまだ「暑くて寝苦しい」「だるい」「のどが渇いた」と切に感じて対策を取ることができるが、高齢者は自分がバテていることにさえ気づきにくいという。高齢者医療にも詳しい疲労回復の第一人者、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんに聞いた。
「私は高齢者用病院に10年ほど勤務した経験があり、そこで気づいたことは“高齢者には正常値がない”ということ。
長年の習慣や、いろいろな病気、認知症などを抱えながら生きていると、睡眠時間もトイレの回数も、血圧、血糖値、コレステロール値も、人によって安定する値が違います。いわばそれがその人の正常値。その安定した状態にこそ目を向けるべきで、“何時間眠るのが正しい”ということはありません。
介護する家族が気をつけたいのは、その人の安定する正常値、つまりいつもの状態から、大幅に変化していないかということです。たとえば安定していた1~6か月前と比較して、睡眠時間に変化があったり、いびきが大きくなった。さらに、日中の活動量が減る、意欲、食欲が低下するなどが見られたら、睡眠の質に問題が出てきているのかもしれません。
原因を探って眠る環境を改善したり、睡眠専門クリニックや呼吸器内科などで睡眠の質を検査・治療してもらうとよいでしょう」
また、梶本さん率いる大阪市立大学医学部疲労医学講座と東京ガスが共同で睡眠の質・部屋の温湿度・活動量のデータをセンサーで見守り、24時間365日のデータを集計し、異常時に知らせてくれるシステム『ライフリズムナビ+Dr.』(http://info.liferhythmnavi.com/)を開発。高齢者施設に導入されているほか、福祉用具としても承認され、介護保険を使って個人宅でも使えるという。
「夏バテが高齢者にとっては命取りになることもあります。小さな変化、不調の予兆を見落とさないようにすることが大切です」(梶本さん)
※女性セブン2018年8月9日号