7月29日から約1か月にわたって続く夏巡業の“主役”は、名古屋場所で初優勝した関脇・御嶽海だ。名門・出羽海部屋からの優勝力士は横綱・三重ノ海以来、38年ぶり。場所後に八角理事長(元横綱・北勝海)が「来場所は(大関が)かかってくる」と明言した。
「直近2場所で22勝だから、『関脇で33勝』という大関昇進の目安まであと11勝。協会関係者の間では“横綱と大関を何人か倒せば10勝でも昇進”という声まである。ただ、御嶽海は三役での2桁勝ち星は今回が初めて。押し相撲なのか、四つ相撲なのかが中途半端で“絶対的な形”がないから、すんなりとはいかない」(二所ノ関一門の若手親方)
期待を煽りすぎることへの危惧は少なくない。名古屋場所終盤の御嶽海の取組について、ベテラン相撲記者は首を傾げる。
「初優勝のプレッシャーがかかる終盤の対戦相手が13日目は境川部屋の大関・豪栄道、14日目は春日野部屋の栃煌山(前頭13)と、どちらも出稽古などで交流の多い出羽海一門の力士だった。栃煌山は下位力士ながら優勝争いに絡んでいたとはいえ、同じような星勘定の力士には高砂一門の朝乃山(前頭13)や、時津風一門の豊山(前頭9)もいた。ぶつけるならそちらが先だったのでは。同世代の同門力士の優勝を阻止する立場になった栃煌山は、いかにもやりにくそうでした」
御嶽海は千秋楽に豊山に敗れたものの、すでに14日目に優勝を決めていたため“花相撲”のようなもの。「優勝が懸かる一番で当てていたら、展開は変わっていたかもしれない」(同前)という指摘には一理ある。ちなみに優勝を決めた相手の栃煌山は、優勝パレードでは助手席に座っていた。