深夜12時すぎ、自室のベッドに入ろうとしていると、枕元に置いてあったPHSが鳴った。
「入院患者さんが暴れて、誰も止められなくて……」
夜勤の看護師の動転した声から現場が切迫していることを察した男は、「すぐに向かうので、決して無理はしないでください」と告げ、病院に急行した。
夜間通用口で待っていた看護師に案内されて病室に入ると、男性入院患者が酒瓶を手に意味不明の言葉をわめき散らし、その傍らで当直の医師が「ウウッ」とうめき声を上げてうずくまっている。男性患者に暴行を受けたようだ。
駆けつけた男に対しても「なんだお前は!」と声をあげる患者。すると男は「まあ、まあ。落ち着いてください」といいながら患者に近づき、「これはひとまず置いておきましょうね」と、酒瓶を持っている手を掴んだ。その腕力と、静かな口調ながらも滲み出る“凄み”に臆したのか、患者はシュンと大人しくなった。この“男”の働きによって、真夜中の病院は平穏を取り戻した──。
医師や看護師に対する暴力や患者同士の喧嘩、さらには窃盗、セクハラなど、病院内ではさまざまなトラブルが発生する。