医師や看護師に対する暴力や患者同士の喧嘩、さらには窃盗、セクハラなど、病院内ではさまざまなトラブルが発生している。現在、こうした事件に対処すべく“院内交番”を設置している病院は全国に約300ある。
ここでは実際に病院専属ポリスが出動した事件の内容を報告する。
中年の男性患者が、有効期限の部分を黒マジックで塗りつぶした国民健康保険証を受付で提示した。
受付の女性職員が「保険証を発行している自治体に確認を取らせていただいてもいいですか」と丁寧に尋ねると、男は「俺はどの病院でもこの保険証で診療を受けている」と大声を上げ始めた。
緊急連絡を受けた“院内ポリス”が「他の患者さんの迷惑になりますから」となだめるが、男は聞く耳を持たない。
だが、最終的に「これ以上続けるのであれば、警察に通報します」と告げると、男はそのまま診察を受けずに帰っていった。現役の院内ポリスとして活躍する井上眼科病院の金子純氏がいう。
「一般の職員は『なるべく大事にしたくない』という思いから、気が引けてなかなか110番通報できません。地元の警察署にも人脈のある“院内ポリス”がためらわずに『通報しますよ』のひと言を告げるのは大きな効果があるんです」
※週刊ポスト2018年8月10日号