祖国を護るために身を捧げた多くの軍人たちの生き方は、我々に多くのことを語りかけてくる──。
東郷平八郎海軍大将と並び称される日露戦争の英雄、乃木希典陸軍大将。しかし、乃木の高名は戦争の巧さだけによらない。旅順要塞陥落後に行われた「水師営の会見」で見せた“武士道精神”も広く讃えられている。
会見の報道用写真の撮影を記者から求められた乃木は、「後世まで(ロシア側に)恥を残すような写真を撮らせることは、日本の武士道精神が許さない」と拒否。許可したのは、会見後に中庭で日本軍とロシア軍が仲良く肩を寄せ合う記念撮影だった。
その他にもロシア兵の戦没者をロシア風の墓地と顕彰碑を作って丁重に祀ることを約束するなど、乃木の応対や処遇に対して、各国から賞賛の声が寄せられた。敵国ロシアで発行されていた『ニーヴァ』誌でも、乃木を英雄的に描いた挿絵を掲載したという。
●取材・構成/浅野修三(HEW)
※SAPIO2018年7・8月号