グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
歌手・水木一郎(70)が持ってきたのは、アニメソングに光を当てた真っ赤なマフラー。
「ゼーット!」の雄叫びと風になびく赤いマフラーで、絶大な存在感を示すアニメソング界の帝王。アニキの愛称で親しまれる水木は、アニメソングをお茶の間に広めたい一心から、恥を忍んでこのマフラーを巻いた。
「長くアニメソングの歌い手は影の存在だった。俺が注目されればこの業界も市民権を得られると割り切った。葛藤もあったが、今ではいい相棒。ファンも3世代になりました」
歌唱力には定評があり、ジャズ、カンツォーネ、アメリカンポップスとレパートリーも多彩。目指すは「最高齢現役歌手」と語るが、数年前に足腰を鍛える目的でアニソン登山部を発足。
「山には登りきった達成感があるのが魅力。でも、歌には頂上がなく、まだ見ぬ頂を目指して極め続けるのみ。声が続く限り歌いますよ」
持ち歌は1200曲超え。衰え知らずの声とパワーで、アニキは命と称する赤いマフラーとともに最期まで燃え続けるのだ。
【プロフィール】みずき・いちろう/1948年、東京都生まれ。ジャズを子守歌に育ち、ジャズ喫茶で経験を積み、68年歌手デビュー。1971年よりアニメ・特撮の主題歌を次々と歌い、今や世界にその名が轟く。8月10日、デビュー50周年記念の特別公演開催
◆撮影/渡辺達生、取材・文/スペース リーブ
◆小学館が運営する『サライ写真館』では、写真家・渡辺達生氏があなたを撮影します。詳細は公式サイトhttps://serai.jp/seraiphoto/まで。
※週刊ポスト2018年8月10日号