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『もしバナゲーム』は“人生の最期”をリアルに疑似体験可能

もしものための話し合いができる『もしバナゲーム』2000円(本体価格)/iACP

 ある日突然、病院から連絡が来て「親御さんが運ばれて助かる見込みは五分五分。人工呼吸器はどうしますか?」などと聞かれてパニック…という事態が今、現実に日本中で起きているという。亀田総合病院の在宅診療科部長・大川薫さんはこう語る。

「医療の進歩により救命できる可能性が広がる一方、無理な延命が苦しみになることもあります。高齢化が進む中、親が救急搬送され、働き盛りの子供が命にかかわる重大な選択を迫られる場面が増えています。

 できる治療は何でもやる、苦痛の少ない治療で様子を見る、痛みや苦しみを取る治療のみであとは自然にまかせるなど、どの選択肢も正解のあるような単純なものではありません。できれば事前に、もしもの時の治療や療養場所について、本人とある程度、話をしておけると助けになります」

 今後の医療について患者、家族、医療者が先に話し合っておくプロセスをアドバンスケアプランニング(ACP)という。本人の意思決定能力が低下することに備えるためだ。

「事前指示書を書くために話をするのではなくて、ご両親がどんなことを大切にしているのかという価値観や信念を共有することが大切です。もちろん状況に応じて気持ちも揺らぎ、変わることもあります。でも価値観や信念を共有しておけば、重篤な状態で意思表示できない場合でも“本人は、今こうしたいだろう”ということが家族や大切な人たちで分かち合えるのではないでしょうか」(大川さん)

 死が迫ったときの選択を日常の中で考えるのは意外に難しい。特に子世代にはできれば遠ざけたいことでもある。そんな意識の向きを自然に変えてくれるのが『もしバナゲーム』だ。

『もしバナゲーム』とは、アメリカの終末期医療の場で、患者と医療者のコミュニケーションツールとして開発されたカードゲームを日本語に翻訳し、レクリエーション要素のあるルールも加えたもの。

 設定は参加者全員、余命半年。年齢・性別、介護する人・される人などの立場も超えて、自分の最期を冷静に、またリアルに疑似体験できる。亀田総合病院疼痛緩和ケア科の医長・蔵本浩一さんはこう言う。

「終末期より、むしろまだ死を意識しない若い世代こそやってみてほしい。自分自身の“生き方”を見直すことにもなり、また親と上手に話し合うコツもつかめると思います」

 ゲームにより、自分と向き合うことになるという。

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