「終末期にはいろいろな事態が起こりますが、ご本人も家族もそれに対応できる知識はなく、もちろん気持ちがついていきません。情報はたくさんあるけれど、何が自分に相応しいのか選ぶのが難しいのです。そんなときご本人の望む最期が迎えられるようコーディネートし、息を引き取る瞬間、納棺まで身近に寄り添うのが看取り士の仕事です」
そう語るのは日本看取り士会会長の柴田久美子さんだ。長年、医療のない離島で自然な看取りを行った視点から、医療依存度が高く、自分の望む最期を迎えられないことの多い現実に対応すべく、看取り士という仕事を作った。
「若い頃、何でも自分で選んで人生を描いてきたものが、老いて弱くなるとどうしても受け身になり、いつの間にか制限ばかり。住む場所や受ける医療や介護、お茶を飲むことさえ自由にならないこともあります。でも最期こそ、自分の思い通りにわがままに満足して迎えたい。私自身がそうしたい。もっと人生の最期を大切にしてほしいのです」(柴田さん、以下同)
数多くの看取り経験から、自分なりの死生観を持つことの大切さも訴える。死に対し目を背けていると、来たるべき最期のときも、それこそ受け身で迎えることになる。不安でいっぱいだ。
「私たち看取り士の死生観は、“人の死は命の受け渡し”というもの。その人の人生で積み重ねて来たことを次の世代にバトンタッチするのが看取りなのです。体は朽ちても魂は残って家族に勇気さえ与えてくれます。
苦悩も喜びも人生のとらえ方次第なのです。プラス志向の死生観をしっかり持つことで、心安らかに受け入れられ、よい人生の最期を迎えたいという意識も生まれます」
※女性セブン2018年8月16日号