「薬に副作用があること」は誰もが知っている。しかし、いざ副作用が自分の身に生じたとき、ただちにそれが飲んでいる薬の副作用によるものだと気付く人は少ない。その理由として、医薬情報研究所取締役で薬剤師の堀美智子氏は、「そもそも副作用の初期症状が周知されているとは言い難い」ことを挙げる。だからこそ、薬の副作用について知っておくことは重要になる。
「重い荷物が持てなくなった」「畑仕事で手足に力が入らない」──真っ先に思いつくのは筋力の低下だろう。老化現象の代表格ともいえる症状だが、症状が急に現われた時には注意が必要だ。
「こうした症状は『横紋筋融解症』の副作用である可能性もあります。骨格筋の細胞が壊死することで、筋肉に痛みや脱力感を伴います。その際、血液中に溶け出した筋肉の成分(ミオグロビン)の影響で腎臓がダメージを受け、腎不全などの腎機能障害を引き起こす恐れがある。手足の脱力、筋肉痛のほか、尿の色がコーラ色に変わるといった症状にも注意が必要です」(堀氏)
横紋筋融解症の副作用がある薬には、高コレステロール血症の治療に使われる「クレストール」「ゼチーア」のほか、鎮痛・消炎剤として多用される「ロキソニン」などがある。前出・堀氏は「過剰に恐れてはいけない」とも注意喚起する。
「最も危険なのは、副作用を恐れるあまり、自己判断で服用をやめてしまうこと。『副作用かも』と思ったら、必ず医師や薬剤師に相談してほしい」
正しい知識をもって薬と付き合うことが肝要だ。
※週刊ポスト2018年8月10日号