風俗はいつの時代も、社会を映し出す鏡である──。女性に比べて、その実態があまり表に出ることのない男性セックスワーカー。どのように彼らは現在の職業に辿りついたのか。また彼らを「買う」女性をはじめとする客たちは、何を求めてやってくるのか。長く風俗業界を取材し、6月に『男娼』(光文社)を上梓した中塩智恵子さんに話を聞いた。
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◆不感症、既婚者、処女……、男娼を買う女性たちの事情
──中塩さんは『男娼婦』の中で、3つのタイプの男娼を紹介しています。第1に「出張ホスト」(顧客は女性)。第2に「ウリセンボーイ」(顧客はおもに男性愛者と女性)。第3に「ニューハーフヘルス」(顧客はおもに異性愛者<ストレート>の男性)。さまざまな性のニーズがあることがわかります。
出張ホストの女性客も様々ですが、夫や彼氏とセックスはしていても、痛いだけで終わってしまうとか、自分が不感症なのではないかと、性の悩みを抱えている女性も多いんですね。
中塩:セックスに関する悩みを持つ女性は多いと思います。男性にも悩みはあると思いますが……私が知る限り、男性は、オレはテクニシャンだと自慢する人の方が多いかな。総じて、男性も女性も、アダルトビデオ(AV)で勉強しすぎの人が多いように思いますね。何も知らない女の子がAVを見たら、自分もあれだけ声を出さないといけないのかと思うだろうし、男の子は、こんなに激しくしないと女の子は満足しないのかと。AVに「これはファンタジーです」って字幕を入れないと弊害が出るんじゃないかと思うくらい、見る側の想像力が乏しくなっているように感じます。
──性の情報があふれすぎているのでしょうか?
中塩:情報をどう受け止めていいかわからなくなっている人はいますね。女性と下ネタを話していて案外多いのが、セックスでイったことがないというもの。で、夫ではイけないから、誰かいい出張ホストを紹介してくださいと。
でも、これまでヒアリングをしてきて、イったことがない女性のほうが多いんですよ。イかなくても気持ちよければそれでいいじゃないかと思うのですが、セックスではイくのが当然という情報があるから、自分も、と思ってしまうんですね。情報はあっても肝心なデータがなかったり、あとは性教育の問題もあると思います。性を話し合える環境が少ない。
──出張ホストのお客さんには既婚女性も多いとあります。既婚女性にとって出張ホストは、夫に「罪悪感を感じず」に遊べる相手だと。
中塩:いまは出会い系アプリやサイトを手軽に利用できる時代ですが、危険な目にあう可能性や、旦那さんや周囲にバレるリスクもあります。プロに頼んで、安心と安全をお金で買って自分の欲求を満たすのは、潔い遊び方だと私は思いますね。
出張ホストのサービスは人によって様々で、本にも出てきますが、性的なサービスはしていない方もいます。彼らがしているのは、デートをして、女性の悩みを聞くこと。カウンセラーのような役割ですね。お客さんは自分が求めているものによって、出張ホストを使い分けることができると思います。