ライフ

稲川淳二怪談グランプリで優勝・美人怪談師が体験した怖い話

私が見える? 空洞の目で顔を覗き込む女

 殺人的な暑さとなっている今年の夏。こんなときこそ、怪談で涼しくなってみては…。稲川淳二が大会委員長を務める『怪談グランプリ2010』で優勝した経験を持ち、女優としても活動する美しき怪談師・牛抱せん夏(うしだきせんか)さんが、とっておきの怪談を披露する──。

 10年ほど前、私はとある公共施設に勤めていました。そこで私が体験した話です。施設は、もともと沼地だった場所に建てられたもの。周囲に目立つ建物はなく、その施設だけがポツンとありました。

 それでも、図書館や体育館などが併設されていたので、休日は多くの利用者がいましたが、夜になると一転、一帯がしんと静まり返り、本当に真っ暗になるんです。

 夜の勤務は21時半までの、2人体制。1人が1階で事務作業をしている間、もう1人が巡回を行います。チェック項目に沿って、決まった場所、決まったルートを点検するのが毎日の業務でした。

 ある日、いつものように巡回していた時のこと。最後に体育館を見回ったところで、隣の女子更衣室を確認し忘れていたことに気づきました。

 すぐに戻ると、3つ設置されたシャワールームのカーテンが3つとも閉まっている。普段、シャワールームは、使用時はカーテンを閉め、未使用時は開けておくのが決まりなので、カーテンを1つずつ開けて確認しました。そこには、当然誰もいません。

 ほっとして、次は後ろのコインロッカーを点検しようと踵を返した瞬間です。

〈あぁぁぁあああ〉

 背後から、女のうめき声のようなか細い声がしました。

──何、今のは? 人の声?

 気のせいだと何度も言い聞かせましたが、予期せぬ事態に心臓が飛び出そうになるのを抑えることができません。

 そして、いちばん近くのロッカーに手をかけた時、急に、腰のあたりがじんわりと熱くなるのを感じたのです。

 その感覚は、ゆっくり、ゆっくりと上の方に這い上がり、いよいよ肩のあたりまで来た時、ぴたっと止まりました。するともう一度、

〈うあぁぁぁああああ〉

 女の吐息とうめき声が混ざったような不気味な声が、今度はすぐ耳元で聞こえたのです。

「ぎゃぁーーーーーー!!」

 私は思い切り悲鳴をあげ、一目散に出口に走りました。しかし、どういうわけか出口に差しかかるにつれて、鉛でもつけられたように足が重くなっていきました。

 その鉛は1個2個と増えるようにどんどんと重くなり、ついにはその場所から全く動けない。声をあげようにも、口を開けられない。全身が硬直するのを感じつつ、言葉にできない恐怖がどっと波のように押し寄せてきました。

──早く逃げなければ、絶対によくないことが起きる──

“何者か”によって自由を奪われているにもかかわらず、その“何者か”が、どうか私の存在に気づかないでくれと、祈るような思いでした。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中圭と15歳年下の永野芽郁が“手つなぎ&お泊まり”報道がSNSで大きな話題に
《不倫報道・2人の距離感》永野芽郁、田中圭は「寝癖がヒドい」…語っていた意味深長な“毎朝のやりとり” 初共演時の親密さに再び注目集まる
NEWSポストセブン
春の園遊会に参加された天皇皇后両陛下(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会ファッション》皇后雅子さま、選択率高めのイエロー系の着物をワントーンで着こなし落ち着いた雰囲気に 
NEWSポストセブン
現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
週刊ポストに初登場した古畑奈和
【インタビュー】朝ドラ女優・古畑奈和が魅せた“大人すぎるグラビア”の舞台裏「きゅうりは生でいっちゃいます」
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン