歯医者に何度通っても、虫歯は治るどころか再発し、挙げ句の果てには、「歯を全部抜いてしまいましょう」──密室の診療室で歯医者の言うことばかり聞いていたら、一生悔やむ事態になりかねない。100人以上の歯医者、歯科衛生士、歯科技工士に取材を重ね、今年6月に上梓した『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)も話題となっている、ジャーナリストの岩澤倫彦氏が緊急レポートする。
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東京・杉並区の成人歯科健診を担当してきた歯科医の岡田弥生氏は、女性は特に歯周病に注意が必要だと指摘する。
「出産時と更年期にホルモンバランスが崩れて、女性は歯周病のリスクが高まります。特に更年期は体調不良が続き、歯肉のケアが疎かになると炎症症状が出てきます。そうした女性特有の事情を理解している歯科医、歯科衛生士は決して多くありません」
歯周病は、バイオフィルムと呼ばれる細菌の感染で歯肉(歯茎)に炎症が起き、歯を支えている骨が溶けてしまう病気だ。自覚症状がないため、気づいた時には抜歯せざるをえないケースも多い。それもあり、歯を失う原因としては虫歯を抜いて歯周病が1位だ。
歯周病の基本診断は、目盛りがついた探針を、歯周ポケットに差し込んで、深さを測定する。深さ4mm以上が「歯周炎」とされる。
その歯周ポケット検査では、痛みや出血を伴うことがあるのだが、日本歯周病学会の指導医・弘岡秀明氏はこう証言する。
「私が教える歯医者のセミナーで、こんな質問が出たことがあります。『歯周ポケット検査で出血すると患者が嫌がって、次から来なくなるのでは?』と。出血を恐れては的確な検査はできず、早期発見の機会も逃してしまいます」
つまり、表面的には優しい検査をやっている歯科医院が、実際には歯周病の進行を見逃しているケースがあるのだ。
また、歯周病の原因であるバイオフィルムの除去には、熟練の技術が必要だ。前出の岡田氏は、自身も歯周病になった経験があり、多くのクリニックを訪ねて確信したことがあると話す。
「しっかりとした歯周病治療をしているのは、1割程度しかありません。歯科医や歯科衛生士のレベル格差も大きいことを実感しました」
これが専門的な視点で見た、日本の歯科医療の現実なのだ。
※女性セブン2018年8月23・30日号