祖国を護るために身を捧げた多くの軍人たちの生き方は、我々に多くのことを語りかけてくる──。
台湾南部・台南市郊外で「飛虎将軍」として廟に祀られている日本人がいる。
零戦パイロットとして台湾に赴任していた杉浦茂峰は、太平洋戦争後期の1944年、米軍による台湾南部への空襲に反撃する際、命を落とした。その杉浦が、台湾で「郷土の守護神」として篤い信仰を集めている。
「飛虎とは戦闘機のことで、将軍というのは神格化された勇士を意味するものです。杉浦氏が祀られるきっかけとなったのは、善戦むなしく撃墜された際、集落への墜落を避けるように飛び去ったことに由来します」と語るのは台湾在住の作家・片倉佳史氏。
飛虎将軍廟は大願成就や勝運に御利益があるとされ、毎朝夕には「君が代」「海ゆかば」が祝詞として流され、煙草が供えられている。
●取材・構成/浅野修三(HEW)
※SAPIO2018年7・8月号