俳優集団「悪役商会」主宰者で、名悪役として知られる八名信夫(82)。今年9月、監督・脚本・主演を務めた2本目の映画『駄菓子屋小春』が上映される。監督としての思いや、悪役の少なくなった最近のドラマについて語った。
――悪役が少ないご時世、八名さんは好々爺のような役もやるように。
八名:年齢的なものもあるだろうね。おれらの親分がいないわけです。本当に面白いのは、親分の下の幹部。親分は、金と女と酒の中でうごめいてるわけだから。ところが、その下の幹部は組のために命を張って相手を倒しにいく、気持ちが全然違うんだね。その面白さを出すには、すごみのある親分が必要だけど、おれより年上の役者は少ないでしょ(笑い)。
――最近のドラマや映画は、悪役らしい悪役があまり登場しませんね。
八名:時代の流れだよね。ドラマにもお笑い芸人やアイドルたちが出演していて、切った張ったの世界はあまり描かれないからね。本物の役者を使った、もっと強烈な人間味が画面に出てくる作品が増えるといいんだけどね。
本当のスターは、そのドラマの中で生まれるわけだよ。「あの脇役の人、すごい演技だね」と言われたら、それがスター。だからドラマによってスターは変わっていかなきゃいけない。
――悪役だってスターになれる。
八名:もちろん。今の悪役の若手に言いたいのは、「殺されに行くな」ってこと。殺しに行って、逆に殺されちゃうんだよ。そういうところに悪役は気をつけなきゃいけない。高倉健さんに指摘されたよ。「お前、生活が楽になっただろ、役者始めた頃のギラッとした目で立ち向かってくれなきゃ。やりなおせ」って。
そういうことを先輩たちはよくわかっていた。例えば、鶴田浩二さんと殺し合いの撮影をする日は、セットに入っても会話をしなかった。「おはようございます」だけ。今日は殺すんだと気持ちを高めていた。
――2016年、初めて監督・脚本・主演を務めた映画『おやじの釜めしと編みかけのセーター』が上映されました。