今年2月に起きた仮想通貨交換業者コインチェックから580億円もの仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した問題が起きて、「仮想通貨」に対する関心が一気に高まったが、それ以前から裏社会では仮想通貨に熱視線が送られていたという。「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の『ハスリンボーイ』原作を担当する草下シンヤ氏が、その“理由”についてレポートする。
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1年ほど前、裏社会でしきりに聞いた言葉があった。
「ビットコインやってる?」「仮想通貨、やべーって」「マイニング始めようと思うんだけどどうかな?」
話題は仮想通貨であった。その後、マスコミでも大きく報道されるようになり、周知のとおり、バブルと言われるような高値に達するようになったわけだが、裏社会の人間は仮想通貨に着目している者が多かった。
中には、短期間で億り人になった者もいるし、その金を元手に裏稼業から足を洗い、合法的なビジネスを展開している者もいる。私も「絶対にやったほうがいい」と勧められたが、手を出すことはなかった。
それは当時、仮想通貨に興味を持っていたほとんどの人間が、私の周囲に限っての話かもしれないが、犯罪者ばかりでなんともきな臭い話にしか見えなかったからである。裏社会の人間が惹かれていたのは、その高い投機性もあるが、それよりも「仮想通貨はマネロンに使える」という点だろう。
犯罪というものは、その犯罪を達成させることも一苦労だが、そうして得た収益をきちんとした金として手元に残すことが非常に難しい。
裏社会では「警察よりも怖いのは税務署だ」と言われることがある。犯罪収益も課税対象であるため、犯罪行為が明るみに出るとその収益が没収されるどころか、これまでにあげたであろう金額を計算され課税されるという懲罰的な措置がとられることもある。追徴課税は自己破産でも免責されないため、一生払い続けなければならない。
水商売やパチンコ店、宗教法人などを用いたマネーロンダリングは広く行なわれているが、仮想通貨を活用する者も増えてきている。
仮想通貨に対する各国の規制状況にはばらつきがあり、一部の国ではマネーロンダリングに使用されるとわかっていながら野放しにしている現状がある。それらの国にパイプがある犯罪組織はその国で仮想通貨を現金として引き出してしまえば、その金の行方を追うことはできない。ある暴力団関係者はこう語っていた。