買い物は大抵の場合、商品の受け取りと代金の支払いが引き換えだが、時として先払いを要求されるケースも。代金を先払いしたところ、店が倒産してしまった場合、料金を取り戻すことはできるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
8万円もする受注生産のスカジャンを購入。先払いで受け取りは2か月後だったのに連絡が来ず、こちらから問い合わせると、その店の関係者が応対し、「店は倒産したので、返金はできない」といわれました。この場合、泣き寝入りするしかありませんか。それとも有効な対処方法があるのでしょうか。
【回答】
あなたが代金を支払った証拠を持っていれば、返金請求できる権利が証明でき、裁判を起こせば判決、簡易な手続きなら、支払督促という裁判所のお墨付きを得ることができます。そして、不動産や預金、在庫商品など業者の財産を探し、判決に基づいて差し押さえをして裁判所に処分してもらい(強制執行)、処分代金から回収することが可能になります。
しかし、倒産した業者には目ぼしい資産が残っておらず、強制執行は望み薄です。業者が会社なら経営者や担当者が、商品の納品ができないことを知りつつ受注し、代金の支払いを受けていた場合には詐欺であり、刑事の問題のほかに民事的にも不法行為となります。
経営者などに個人的な資産がある場合、不法行為に基づく損害賠償の請求も検討できます。ただし、そのためには商品納品時の2か月前に、倒産や納品不可能を予測していたことを証明する必要があります。ですが、これは調査権限がない、私人が簡単にできることではありません。消費者センターや警察の生活安全課などに相談に行っても同様の被害者が多くいて、社会問題化しないと、こうした関係機関も動きづらいところです。