東京都内と名古屋で観測史上初の40度超えを記録している2018年は、気象庁も「災害」だと認めるほどの猛暑が続いている。消防庁によれば、7月23~29日の一週間に熱中症で救急搬送された人数が全国で1万3721人、そのうち39人が死亡した。部活動中に熱中症となり救急搬送されたといったニュースも今年は多く、安全のために課外活動を中止したり、時間や場所を変更した学校も多いと言われる。ところが現実には、周辺の大人たちによる奇妙な同調圧力によって、危険に直面させられている生徒や教員も少なくない。ライターの森鷹久氏がレポートする。
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埼玉県下の某高校に勤務する松本雄介教諭(仮名・30代)は、この夏すでに二回も倒れ、うち一回は救急搬送までされた。松本教諭は野球部の副顧問だ。
「子供たちにも、あまりの暑さで嘔吐したり、気分が悪くなって倒れたりする子がいるんです。35度を超えている日に、グラウンドで練習なんて異常です。しかも日焼け対策に皆長袖長ズボン、帽子まで着用しなければならず……。はっきり言えば、もうこんなことは、子供にやらせるべきではないし、どの先生も同じ思いです。ただ、言い出しっぺになりたくないから、こうしてズルズルと、子供たちを過酷な環境下に置くことになってしまっている……」(松本教諭)
グラウンドの隣では、サッカー部、硬式テニス部の生徒らもこの炎天下の中、一日数時間の練習を行っている。救急搬送されたり入院するような子は“まだ”出てはいないが、気分が悪くなり保健室で休んだり、体調を崩して補修や特別授業を休む生徒が続出していると訴える。
「私たちの学生時代、ここまで暑くはありませんでした。なのに“我慢すべき”と、学校の上層部は譲りません。我々だって本当にきついのですが、教師が生徒を引っ張っていかなくてどうする……などと言われて」(松本教諭)
体調不良者が相次いだために、学校はついに部活開始時刻の“前倒し”を決めたというが、これも「焼け石に水」だという。
「部活の開始時刻が朝七時からと決定しましたが、八時にはすでに30度を超えていることもあるのです。上層部が“涼しいうちに部活を”などと言っていますが、実態を知らなすぎる。こんな暑さのなか運動をして、午後はみんなぐったりです。学習する時間も取れないほど、体が疲弊する」(松本教諭)