認知症と似た症状の“せん妄”。高齢者や認知症のある人、脳卒中などの脳血管疾患になったことがある人はリスクが高いという。中でも、脱水症状により引き起こされるせん妄は、命を落とす危険性もあるほど注意が必要なものだ。
せん妄は、1日の中でも症状がコロコロと変わり、自分が誰だかわからなくなったり、現実にはないものが見える幻視や幻覚が現れたりする。端からは理解しにくいが、せん妄には本人の恐怖や不安を理解して対応をしていく必要がある。
では、いざせん妄が起きたらどうするか。高齢者医療に詳しい、たかせクリニック理事長・高瀬義昌さんはこう語る。
「まずは、本人が“自分が自分でなくなっている”状態であることを家族はよく理解し、本人の不安や恐怖を和らげて落ち着かせることが大切。興奮したり暴れたりしているときに力づくで押さえたり、言葉で説得しようとすると、かえって逆効果になります。また低活動型の場合も、一方的に励ましたり、元気づけようとして無理に活動させたりすると余計に本人の負担になります。家族自身が落ち着いて、本人を受け入れる姿勢を見せて寄り添いましょう」
攻撃的、暴力的になっているときは自分自身が誰かもわからなくなり混乱状態。ベッドなどから落ちて骨折するなどの危険があるので、まず本人の安全を確保することが優先だという。
直接的な原因が病気の場合は、病気を治療することでせん妄がおさまる場合もあるという。ただ多くの場合はいろいろな要因が複合的に重なって発症するので、単純ではないそう。いずれにしてもきちんと相談できる医療機関にかかることが必要だ。
「興奮状態がなかなかおさまらないなど、家族の手に負えない場合は救急車を呼んでもよいでしょう。認知症があったり何度かせん妄を繰り返したりするようなら、重篤な症状に至るリスクが大。
かかりつけ医に相談し、大きな病院の精神科や各都道府県・指定都市にある認知症疾患医療センターなどを一度受診すると安心です」
※女性セブン2018年8月23・30日号