真夏の開催となる2020年東京五輪に備えて「サマータイム導入」を、この秋の臨時国会で決めようとしている。しかしサマータイム導入は、深刻な健康リスクを高めると専門家は指摘している。リスクは国民の健康面だけではない。
企業や官庁のサーバーなど「時間」を基軸に動いているシステムには膨大な改修作業が必要になる。サイバーセキュリティが専門の立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授は「2020年までに大混乱なく導入することは不可能」と明言する。
「自治体の電子化された戸籍データ、金融機関同士のネットワークに加え、各家庭にある番組表対応のテレビなどの家電の数々まで、修正プログラムを開発する必要がある。こうした修正にはエラーの発生がつきもので、とりわけ、失敗が許されない公的なシステムをテストして実際に動かすには4~5年の準備期間が必要。民間企業でも3年は必要です」
そうした修正にかかるコストも膨大だ。
上原氏によれば、国や自治体など公的インフラの修正だけで3000億円程度の投資は必要だといい、「民間企業まで含めれば数兆円に上るでしょう。この改修費用は将来何か利益を生む投資ではなく企業にとっては“経済被害”としかいいようがない」のだ。
※週刊ポスト2018年8月31日号