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サマータイム導入のリスク 深刻な健康被害、交通事故増加も

サマータイム経験者の外山滋比古氏が問題点を指摘

 この秋の臨時国会で、「サマータイム導入」が決まろうとしている。本当に“国全体の時間”をずらしてよいのか。仮に来年からサマータイムを導入すれば、何が起きるのか。1948年に導入され1952年4月に廃止されたサマータイムの経験者であり、累計200万部超のベストセラー『思考の整理学』著者で、御年94歳の英文学者・外山滋比古氏(お茶の水女子大学名誉教授)はこう見通す。

「終戦直後の導入期は、電車やバスの乗車時刻をしょっちゅう間違えたものです。数か月して慣れてきたと思ったら、今度はサマータイムが終わり、また生活リズムが崩れる。現代でも同じようなことが起きるでしょう」

 無理にサマータイムに順応しようとすれば、さらに深刻なリスクが生じると専門家は指摘する。国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部長の三島和夫氏が解説する。

「人間の体内時計は、睡眠リズムを『後ろに動かす』のは簡単にできても、『前に動かす』のは難しいという特徴があります。そのため夏時間に入って強制的に早起きさせられても、その分、簡単には早寝することができず、睡眠不足に陥りやすい。ただでさえ、日本人の平均睡眠時間は、8時間超を確保しているOECD諸国に比べて1時間も短い。ここからさらに2時間の前倒しで睡眠時間が削られれば、深刻な健康被害のリスクが高まる」

 実際、サマータイムが定着している欧米の研究で、健康被害の存在は実証されている。

「1987~2006年にスウェーデン国民を対象にした調査では、夏時間が始まった直後の3日間に心筋梗塞発症率が5%高まったことが明らかになっています。生活リズムの急激な変化に影響を受けた結果だと考えられている」(三島氏)

 英国では、サマータイム制度が一時休止された後に再導入された1970年代のデータに基づく研究で、再導入後、傷害を伴う交通事故が10.8%増加したことが明らかになっている。

※週刊ポスト2018年8月31日号

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