平成最後となる終戦記念日の天皇の「お言葉」は、近年同じだった文言に、「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致し」という一節が付け加えられた。そこにはどんな思いが込められていたのか、『戦争をしない国 明仁天皇メッセージ』著者の矢部宏治氏と『天皇論 平成29年』著者の小林よしのり氏が議論した。矢部氏は今上天皇は沖縄という視点から見るとテロにもめげず慰霊を続けるなど、実は非常にアクティブで強い意志をもっていると指摘した。
小林:沖縄の件に続き、もう一つ革命的だったのは、被災地に行ったときに、しゃがんだりして被災者と目線を同じにしたこと。それはもう、今上陛下が独自につくったスタイル。それをやったら天皇の権威は失われてしまうと誰しも思った。わしも思っていた。ところが、違った。天皇に対する敬愛の念が高まり、逆に権威を高めた。すごい逆転劇だなと思いました。
矢部:沖縄の問題と同じで、本気度が伝わるんですね。
小林:即位したときは「戦後民主主義の青二才みたいのが天皇になった」と揶揄されたが、いまや昭和天皇より今上天皇のほうが国民の敬愛が高くなっているわけだから。
矢部:民主主義国家・日本における「新しい天皇像」を、ものすごい努力をして作り上げてこられた。その本来の務めができなくなったから譲位したいとおっしゃっているのに、安倍政権は当初、非常に消極的だった。保守派の言論人たちも政治的発言は「言うな」と。それはおかしいでしょう。