試合終了──史上初となる2度目の春夏連覇を達成し、喜びを爆発させる北大阪代表の大阪桐蔭ナインを前に、雑草魂で頂点まであと一歩に迫ったエースは天を仰ぎ涙を流した。
第100回の記念大会となった今回の甲子園。最も注目されたのは、秋田代表・県立金足農業高校の快進撃を牽引した吉田輝星投手(17才)だろう。強い意志を宿すくっきりとした二重の目、鼻筋の通った端整な顔立ちに輝く白い歯。冷静なマウンドさばきと熱い咆哮をあげる姿とのギャップは、世の女性たちの心をわしづかみにした。
「フィーバーぶりは、早稲田実業のハンカチ王子こと斎藤佑樹投手(北海道日本ハムファイターズ)が2006年に甲子園を沸かせたとき以来です」(スポーツ紙記者)
これまで夏の甲子園で優勝したことのない東北の、しかも公立農業高校のエース。地元の期待を一身に背負い、この夏は地方大会から決勝まで一度もマウンドを譲ることなく、白球を投げ込んだ。
「ナイン全員が秋田出身。全国からエリート選手をかき集める強豪校にはない“雑草魂”も彼らの強さの1つです」(同前)
輝星という名前の由来は「輝く星になってほしいから」。また、シドニー五輪柔道100kg級金メダリストの井上康生氏にもちなんでいるという。甲子園でまさに輝く星となった吉田投手は、2001年、秋田市に生まれた。元高校球児の父親も金足農業でピッチャーを務めており、現在は同校のOB会長だ。梨農家を営む祖父も、やはり同校OBだった。
野球に初めて触れたのは小学1年生のとき。すぐにのめり込み、中学生になると自らランニングを日課にした。
マウンドでは冷静沈着かつ強気な吉田投手だが、野球を離れると意外な一面を見せる。
「実は吉田投手はカエルが大の苦手。また、オフの日はスマホ片手に家でゴロゴロしているインドア派だそうです」(地元メディア記者)
白く輝く歯がまぶしい吉田投手だが、あの白さはマウスピースをつけているからだ。
「投球時に歯を食いしばるので、奥歯が欠けてしまったことがあるそうです。それがきっかけで、2年生の頃からマウスピースを使うようになりました。試合では規定で白いものしか使いませんが、練習では、ピンクやチームカラーの紫を使うことが多いです」(同前)
吉田投手はさらに意外なエピソードも持っていた。歯を欠いただけでなく、パンツを破いたこともあるというのだ。