平日の夕方5時。横浜のあるスーパーでは、夕飯時を前に、沢山の買い物客がカートを押しながら店内を回遊していた。乳製品コーナーで立ち止まり、商品を次々とカートに入れていくのは、このスーパーの10年来の利用者という、50代主婦A子さん。
「ここは他のスーパーと比べてかなり安いので、いつも利用しています。ほぼ毎日使う牛乳や納豆、豆腐なんかは、新しい商品が入荷すると、わずかに賞味期限が短いだけなのに、古い商品を3%値引きしてくれるんです。すぐに食べるものなのでお得だし、助かっています」
野菜コーナーでPOPを見つめ、商品を吟味していた40代主婦B子さんも話す。
「今年は不作のため値段が高くなりますとか、沢山仕入れたので何日までは安くしますとか、一つひとつ理由が書いてあるのがわかりやすくていいですね。『他店に対抗して値下げしました』と書かれたPOPを見ると、お得な気がしてつい買っちゃいます」
消費の低迷で大手総合スーパーが軒並み苦戦する中、“借り入れ無しで年率20%成長”を標榜し、2018年3月期決算の売上高は約3573億円と、31期増収を続けるスーパーがある。東京や神奈川など1都3県を中心に112店舗を展開する「オーケー」だ。
基本方針に「高品質・Everyday Low Price」を掲げ、“超顧客重視”の姿勢を徹底的に追求。サービス産業生産性協議会実施の調査で7年連続顧客満足度1位を獲得するなど、主婦を中心に絶大な支持を得ている。
具体的に、どんなところが“超顧客重視なのか”、同社が本社を構える「オーケーみなとみらい店」で、二宮涼太郎社長に話を聞いた。
まず、オーケーが他の店と大きく異なるのは、特売日を設けないことだ。特売日だけでなく、「先着○名様限り」「タイムサービス」といった販売も行っていない。二宮社長が話す。
「基本方針の通り、毎日が特売日なので、メーカー品についてはいつでも地域一の安さを目指しています。競合店の売価を調査し、他店より高い商品があった場合は値下げを行い、『競合店に対抗して値下げしました』と書いたPOPも掲示して販売しています。また、商品を買った翌日に、同じ商品が安くなっていたら、誰でも悔しいですよね。うちではそうした不公平な対応もやっていません」
◆「オネストカード」には何が書かれているか
店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが語る。
「オーケーは、生鮮食品はトレイのサイズを絞り、飲料は常温で販売するなど工夫してコスト削減を図っています。実際、ある大手総合スーパーと品目別に価格を比べたところ、オーケーは10品目中8品目で安かった」
店内を見渡すと、至るところに工夫が凝らされている。中でも代表的なのが、同社の「オネスト(正直)カード」だ。
商品説明が細かく記載されたこのカードは、単に商品の売り込みのために掲示しているのではない。例えばこうだ。