抗争勃発から3年。六代目山口組が、分裂した神戸山口組、任侠山口組からの出戻りを認めるタイムリミットとした8月末が迫っている。
「警察は“期限切れ”となる9月以降に分裂後最大級の抗争が起きるかもしれないと警戒を強めている。さらにその先を見据えて、中長期的に“抗争を未然に防ぐ仕組み”を開発しようとしている」(警察関係者)
それがビッグデータで暴力団の襲撃の予兆を把握する“襲撃予測システム”だ。
「犯罪や事故発生を予測する仕組みづくりは全国の警察で進んでいますが、とくに福岡県警は壊滅作戦を進める特定指定暴力団工藤会(北九州市)への対策として、組員らの行動パターンをもとに彼らの襲撃を事前に把握するシステムを構築しようとしています。組員が事件直前、車で襲撃場所の下見をしたり、組事務所に出入りする人間に変化が見られるなどの行動パターンを取ることに着目し、そうしたデータをコンピュータで解析して、襲撃場所や時間が事前に予測できるようにしようとしている」(同前)
福岡県警関係者によれば「本年度中の開発を目指している。あくまで目的は一般の証人などの保護」というが、これが全国に広がれば、暴力団同士の抗争も未然に防げるようになる可能性が出てくる。
「実際に敵対組織への襲撃直前の行動にパターンがあるのは事実なので、システムが発動して有効性が高まるとヤクザが苦しくなるのは間違いない。ヤクザの武器である暴力的威嚇そのものが封じられれば、3つの山口組抗争を終わらせるどころか、暴力団そのものの存在意義まで失われる可能性がある。警察にとってこのシステムは、市民の安全を確保するという大義で予算を獲得しやすいので、開発が進むのは案外早いかもしれない」(フリーライターの鈴木智彦氏)
対抗して暴力団の側も、現実には戦わない“シミュレーション抗争”で決着をつけたらどうか。
※週刊ポスト2018年8月31日号