4年に一度、アジアの国々が参加するアジア大会がインドネシアで行われている。2年後の東京五輪を控え、バドミントンや水泳、フェンシングなど好成績が伝えられるなか、史上最低の成績に終わった種目がある。金メダル0個に終わった女子レスリングだ。2002年の釜山アジア大会以来、日本女子は常に金メダルを手にしてきた。ところが今回は、リオデジャネイロ五輪金メダリストの川井梨紗子ですら銅メダルに終わった。この衝撃は大きく、「やはり栄(和人)さんでないと、確実に勝たせるのは難しいのか」という声が関係者から漏れるほどだった。
「この数年は、指導といっても栄さんが直接、携わることは少なくなっていたので、現場から退いてもたいして影響はないと思っていました。でも、こういう大会で優勝するまでしっかり勝ちきるための独自のノウハウというか、見えないマネジメントのようなもので金メダルを支えていたのかもしれない。栄さんには、何らかの形で再び代表チームに関わってもらう方法を考えた方がいいのかもしれない」(レスリング協会関係者)
今年、内閣府への告発が明るみに出たことで噴出したパワハラ問題の結果、強化本部長と至学館大学レスリング部監督を退いた栄和人氏への復帰を望む声が、思わぬ形で聞こえてきた。だが現実には、そう簡単に復帰はできないという考え方が主流だ。それというのも、パワハラの被害者である、五輪四連覇をした伊調馨に対する謝罪すら済んでいないからだ。
「お盆の直前、レスリング協会がA4用紙1枚だけのリリースを突然、配布しました。内容は、レスリング協会の福田富昭会長が、伊調馨選手と直接、面談して謝罪したという事実を知らせるもの。このとき協会は紙を配っただけで、それを説明するための会見はおろか、担当者による囲み取材すらありませんでした。記者から質問を受けるような場所をつくって、栄さんは謝罪したのかと聞かれるのを恐れたから、でしょう」(スポーツ紙記者)
アジア大会での成績を鑑みて、日本の女子レスリングが、どのような強化方針を組み立てていくのかに注目が集まるなか、伊調馨が10月の大会で公式戦に復帰すると正式に発表した。栄氏が指導に復帰するか否かにかかわらず、2020年東京五輪へ前向きにのぞむためには、存在が認定されたパワハラについてのけじめはつけるべきだろう。