「僧帽弁」は左心房と左心室の間にある弁で、何らかの原因で弁が機能しなくなると僧帽弁閉鎖不全を起こす。重症になると弁形成術や人工弁置換術が必要となるが、今年4月に手術支援ロボット治療が保険適用になった。従来の肋骨を切る手術とは違い、約2センチの傷を4~5個開けるだけなので出血や痛みが少なく、また3Dカメラの映像で広い術野での手術が可能だ。
心臓は4つの部屋に分かれ、部屋の間にはそれぞれ弁が付いている。肺から豊富な酸素を含んだ血液が左心房に入り、それが左心室に送られ大動脈を通り、全身に血液が送り出される。こうした全身へ血液を循環させるポンプの役割を担う左心室の入り口に僧帽弁があって、出口には大動脈弁がある。
僧帽弁閉鎖不全症は動脈硬化や心筋梗塞、リウマチ熱などが原因で僧帽弁の機能が悪化する病気だ。左心室から送り出される血液の一部が左心房に逆流し、全身への血流量が減少して左心房が拡張する。急性発症の場合は肺高血圧、肺うっ血による呼吸困難が現われる。慢性の場合、軽症では無症状なこともあるが、左心室の機能が徐々に低下するため、息切れや呼吸困難などの症状が現われる。
ニューハート・ワタナベ国際病院の渡邊剛総長に聞いた。
「僧帽弁閉鎖不全症は心房細動という不整脈が現われることがあります。動悸を感じるだけでなく、心臓内に血栓が生じ、それが脳に飛んで脳梗塞を起こすこともあり、大変危険です。重症の僧帽弁閉鎖不全症では、弁形成術や人工弁置換の手術を行ないます」