誰でも言えるような耳障りの良いコメントを並べ、自分のことは棚に上げて、他人のスキャンダルに正論を吐く。テレビをますます薄っぺらくする「偽善コメンテーター」の問題は、これまでもたびたび指摘されながら、いっこうにいなくならない。大阪大学名誉教授の加地伸行氏が著した『マスコミ偽善者列伝』が、発売早々3万部のベストセラーとなっている点も、その考えに同意する人が多いからだろう。なぜ偽善コメンテーターがテレビで増殖しているのか。そこには昨今のテレビ局の“自主規制文化”と予算問題が関係している。
メディア法が専門の立教大学名誉教授・服部孝章氏の話。
「いまのテレビは、“本音の意見”を求めていないんです。ネット全盛の時代、人の発言はすぐに炎上しますから。それでスポンサーにクレームが殺到するのは絶対に避けたい。“当たり障りのない話”をする人ほどテレビ側も重宝するので、コメンテーターもそれにならって無難な正論でお茶を濁す。本来は特集ごとに専門家を置くべきなのですが、そんな作業は面倒だし、いつものコメンテーターが賑やかして話してくれることを制作者側も望んでいる」
テレビ関係者によれば、2時間の情報番組の制作費は、局によって差はあるが、おおよそ1000万円前後。コメンテーター3人が10分話せば100万円相当の価値がある。3人分のギャラ20万~30万円で100万円分の尺が埋められるとあっては、テレビ局がコメンテーターに頼るのは無理もない。
情報番組にコメンテーターとして出演することの多いジャーナリストの須田慎一郎氏が語る。