偶然なのか、何らかの意味を持たせられたものなのか、数字の判断が難しいことはままある。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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重さ10トンの風車も倒す強い台風20号が西日本を縦断し、猛威を振るった。その少し前、中国では台風18号(ルンビア)が山東省に大きな被害をもたらした。台風が去ったあとには、河川の増水などで広範囲に水没した一帯を映した写真や映像がメディアにあふれた。
被災した人々の状況を伝えるために各地で記者会見が開かれたが、そうした会見場の一つで、記者たちが大いに首をかしげるような話題が持ち上がった。場所は、最大の被災地の一つである山東省濰坊市。会見では、被害状況や救助についての説明が行われたのだが、話題をよんだのは当局が発表した統計だった。
20万人を超える人々に被害が及ぶなか、〈死亡が確認されたのは13人。現在まで安否の確認ができない失踪者が3人。うち、9人は、自動車を運転しながらの水没であった〉ことが説明された。
ここまでは普通のことだが、記者たちが騒めいたのは倒壊家屋の数が知らされたときであった。その数が9999軒だったのだ。
これを伝えた『新京報』(2018年8月24日)のタイトルは、〈水害で倒れた家屋は全部で9999軒 こんな妙なことが起きるものなのか?〉だった。当然のことだが、これに最も強く反応したのはネットだった。
増え続ける書き込みのなかには、〈『国家自然災害救助応急預案』では、被災し倒れた家屋が10000を超えた場合には、自動的にⅣ級の災害の指定を受けられる。こうなると対応するのは省レベルとなる。そうしないためにギリギリで抑えたのでは?〉といった疑惑に言及する者もあった。
だが、もし当局がそういう意図をもっていれば、もっと思い切って数を減らす方が自然である。つまり、偶然というべきなのだろうが、現地メディアはどう受け止めてよいのか戸惑うばかりだという。