ライフ

【著者に訊け】ジブリ鈴木敏夫氏の小説『南の国のカンヤダ』

スタジオジブリ代表取締役の鈴木敏夫氏

【著者に訊け】鈴木敏夫氏/『南の国のカンヤダ』/小学館/1600円+税

 主人公は媚びず、日和らず、その圧倒的な存在感で周囲を魅了する絶世の美女、カンヤダ・サングスワン。5年前、そのタイ人女性と出会ってしまった瞬間を、スタジオジブリ代表取締役、鈴木敏夫氏は自身初のノンフィクションノベル『南の国のカンヤダ』でこう振り返る。

〈場所は、とあるマンションのエレベーターの中。ぼくは、カンヤダをひと目見て驚愕した。ぼくが若き日に恋い焦がれた女優さん、安田道代さんにカンヤダが瓜二つだったからだ〉……。そうこうして連絡を取り合い、タイの田舎・パクトンチャイにある彼女の実家を訪ねるまでになった著者は、実は困っている人を見ると黙ってはいられない、自称〈お節介な人〉でもあった。

 そんな性格が災いしてか、幼い息子や親戚縁者の面倒まで見ている彼女の生計を何とか立てさせようと、周囲を巻き込み、「プロジェクト化」していく鈴木氏。思えば数々のジブリ作品もそうした「お節介とご縁の積み重ね」によって、今日の成功に繋がったと語るのだ。

「せっかくだから本に書いてない話をしようか。宮さん、つまり宮崎駿が『ナウシカ』と『ラピュタ』の後、『トトロ』を撮るでしょ。あれは『火垂るの墓』と2本立てだから公開できた作品なの。昭和30年代の日本を舞台に子供とお化けの交流を描くこの企画に、当時は誰一人乗ってくれなかった。そこで他社の友人を巻き込んで、野坂昭如さんの『火垂るの墓』も一緒に作って説得しようとなり──、そういうご縁がごまんとあるわけです。

 僕は徳間書店に入社早々、『アサヒ芸能』に配属され、仕事後に皆で飲みに行くと、そこでの話題は上司の悪口や愚痴ばかり。呆れた僕は社内のつきあいを一切やめ、社外にばかり友達ができるんだけど、宮さんや高畑(勲)さんと映画を作る頃には、その仲間がみんな偉くなっててね。あれほど多くの出版社がクレジットに並ぶ映画は他にないってくらい、皆が力になってくれた。僕は仕事もご縁とお節介でやってきた人間なんです」

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン