ミリオンヒットが連発された1990年代、J-POPシーンでは従来裏方であったプロデューサーの存在が大きくクローズアップされる風潮がありました。K-POPの世界でも、緻密に計算された売出し戦略「A&R」に沿って生み出されたガールズグループ「今月の少女」(LOONA)が、世界各国のダウンロードチャート上位に駆け上っています。K-POP業界に新しい風を吹かせるこのプロジェクト、実はJ-POPの、それも渋谷系の影響を受けているのではないか? という大胆な推理を立てているのが、K-POPのディープなウォッチャー、ライターのまつど☆たまき氏。二年間のウォッチで、すっかりOrbit(オービット:LOONAファンの総称) の一員になってしまったという氏が、その世界的ブレイクの裏事情をやさしく解説します。
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今回はK-POP的にちょっと先物買いの話です。日本での知名度はまだまだですが、韓国では、というより既にワールドワイドの規模で大注目を浴びている新ガールズグループをご紹介しようと思います。
その名も「今月の少女」。またの名を「LOONA」といいます。
月(LUNA)をヒネったというそのネーミングどおり、誰もが見上げる太陽ではなく月──従来のガールズグループの規格を大きくハミ出した、12人の個性派美少女ばかりを集めたウルトラユニットです。世界の音楽通がなぜ、この新人グループに熱狂するのか、その秘密をお話して参りましょう。
◆99億ウォンと二年を費やしたデビュー“前”プロモーション
LOONAはこの8月20日、デビュー・アルバム『++』をリリースしたばかり。すなわちこの記事を書いている段階ではまだキャリア一週間の新人グループです
しかし、そのセールスは、既に大事件と言えるほどの勢いになっています。
アルバム発売とほぼ同時に、英・米・ブラジルなど6カ国のiTunes K-POPチャート1位を奪取。さらに上位カテゴリー「ワールドワイドアルバムチャート」でも2位まで上昇。韓国内のハントチャートでも発売二日目の午前段階で、アルバムランキング1位を記録する大ヒットを記録しました。シングルカット曲『Hi High』のMVが、公開第一週でYouTube視聴数1000万を突破。LOONAはこのたった一週間の活動で、一気に今年の新人賞レース最右翼に進出したといっていいでしょう。
この快挙は単なるポッと出の新人のブレイク劇などではなく、これまで2年間に渡って繰り広げられた、史上まれなる斬新なプロモーション活動の賜物。決して偶然のフロックではありません。
「え、LOONAってデビュー一週間の新人じゃないの?」と思った方もあるでしょう。でも、その謎は、もう一つのグループ名「今月の少女」の意味を紐解いていくことでわかってきます。
そもそもLOONAの“プロジェクトとしてのスタート”は、2016年の10月に遡ります。グループデビューに先立って、(ほぼ)毎月のペースで、12人のメンバーを一人ずつ、ソロ曲でお披露目デビューさせるという、異例のプロモーションを展開してきたのです。