今年、熱中症による救急搬送は過去最多を記録。高齢者にとっては厳しい夏になった。日本気象協会の発表では9月の気温も全般に平年並みか高めと予想されているので、まだまだ油断はできない。
高齢者にとって危険なのは、熱中症の原因でもある暑さによる脱水だが、もう1つ、脱水が引き金になる病気が血栓症。見逃すと命にもかかわる脳梗塞や心筋梗塞に代表される病気だ。
菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁さんに、家族が知っておくべき兆候や予防法を聞いた。
「血栓というと、冬の寒い時期に血管を詰まらせるというイメージがありますが、実は夏にもリスクがあります」と言う菅原さん。
血栓とは血液のかたまり。けがで出血したときなどに、血中の血小板と呼ばれる成分が傷口に集まり、速やかに固まることで止血されるが、同じことが血管の中でも起こる。
「血管内にできた血栓が大きくなったり、またはがれて血流にのり、血管の狭い箇所を詰まらせることもあります。脳の血管が詰まれば、その先への血流が滞り、酸素や栄養が届きません。それによって脳細胞がダメージを受ければ脳梗塞。同じように心臓の血管が詰まることで心筋梗塞になります」
冬の低温下では血管が収縮して血圧が上がり、血管内が傷つく。その修復のための血栓ができやすくなるわけだが、夏の場合は少し違うという。
「夏は脱水が引き金になります。たくさん汗をかいて血液中の水分が少なくなると、成分が濃くなり、いわばドロドロの状態。この状態の血液も、血栓になりやすいのです。今年亡くなった西城秀樹さんが、最初の脳梗塞を発症されたのは6月。またMr.Childrenの桜井和寿さんが小脳梗塞を発症されたのも7月でした。夏でも油断は禁物なのです」
さらに大きな要因になるのが動脈硬化だという。
「動脈硬化は糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病が主な原因で、動脈の内膜の中にプラークと呼ばれるコレステロールなどが蓄積します。血管はしなやかさを失い、プラークは次第に大きくなって血管内を狭くします。
当然、血液の流れが妨げられ、血栓ができやすくなります。年齢を重ねることで、どうしても動脈硬化は進みます。そして高齢者は基本的に体が保持する水分量が少ないため、猛暑下に限らず脱水になりやすい。つまり、高齢者は夏血栓のリスクが非常に高いわけです」
※女性セブン2018年9月13日号