『くるめる』(オープン価格・実勢価格2700円前後、インタレント・プロダクション)は、システム手帳ほどのコンパクトサイズで、非常に軽量な防災グッズだ。バッグに入れっぱなしにさせないための工夫と、女性にとって不可避なトイレ問題を、“あるもの”を使って解決した。
『くるめる』は、外側は不織布で軽量。同じく軽量な不織布マスク、LEDリトルライト、ホイッスル、傷テープ、消毒ウェットタオル、男女兼用尿とりパッド、レスキューシートの7点入り。外装は高さ180mm×奥行き70mm×幅190mm、重さ210gの軽量だ。
高知県在住の谷村景弓さんは、出先で困らないようにと、あらゆるものをバッグに入れて持ち歩きたいタイプ。
「外出中に、友人から“◯◯持っていない?”と聞かれても大丈夫。たいていのものは持っています」と笑う。
防災グッズも同じように持ち歩きたかったが、その外見は目につきやすい蛍光色か、反対にシンプルな黒のポーチタイプが多く、どちらも好みに合わなかった。どうしてもバッグに入れる気になれず、カラフルで女性にも喜ばれる携帯用防災グッズを作りたいと考えるようになった。
思いついたのは、大工がのみや金づちを入れて持ち運ぶ「のみ巻き」のようにくるくる巻いて収納できる形状のもの。ところが、防災アイテムとして消毒用ウエットティッシュを入れるとなると、巻くタイプではうまく収納できず、結果、三つ折りに畳む形にアレンジし、リボンで結ぶ形に落ち着いた。ポケットの中にグッズを収納するため、緊急時にグッズが取り出しやすくなっている。
素材は不織布を採用。布製のポーチは非常に頑丈なため、ついバッグに入れっぱなしになり、いざ使おうとしたら、中身が傷んでいたり足りないものがあっても気づきにくい。
一方、不織布は丈夫すぎないため、古くなった外装を取り替えるついでに中身の確認をしやすく、自分で必要なものも考えて収納するよう促すことにもつながるのだ。
また、高知県は土佐和紙の産地で、製紙業が盛んだ。その影響で不織布を作るメーカーも多い。不織布に詳しい専門家のアドバイスを受けながら、和紙のような風合いでおしゃれさがある土佐の揉み紙加工を施した不織布を使用することに決めた。
谷村さんの頭をいちばん悩ませたのは、防災グッズに必須の携帯トイレをどんなものにするか、という問題だった。周囲の男性からは「通常の携帯トイレでいいのでは」という声もあったが、車内などでの使用を想定した携帯トイレは、紙コップのような筒状容器に用を足す形で、女性には抵抗がある。そこで思いついたのが、介護用の尿とりパッドだった。
「尿とりパッドを防災グッズに取り入れたのは、初めてのことかもしれません。男女兼用で使えるだけでなく、生理用ナプキンの代替や止血材としても使えます」(谷村さん)
1年半の構想と制作期間を経て、『くるめる』は2013年に完成した。県の防災認定を受けるための審査会では、コンパクトに防災グッズが持ち運びできるという評価を受けただけでなく、その場で購入した人が電車に閉じ込められるアクシデントに遭い、実際に『くるめる』が役立ったという。本当に使える防犯グッズであることが証明された瞬間だった。
※女性セブン2018年9月13日号