「クランクインした3か月ほど前には、リハーサル現場で山崎さんの主語が欠けた会話やぎこちない体の動きを確認し、やり直しをお願いすることもありました。その後も脚本や映像のチェックを続けてきて、いよいよ最終回です。山崎さんが『発達障害』という病気の理解を深めているので、もう修正はほとんどありません。私自身、映像チェックで感極まってしまうことも増えました」
そう語るのは、今クール注目のドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)の医療監修を務める、ハタイクリニック院長で精神科医の西脇俊二さん(56才)だ。
山崎賢人(23才)演じる小児外科の研修医・新堂湊は、発達障害の一種である「自閉症スペクトラム障害」で他人との意思疎通に困難を抱えながらも、子供たちや親に向き合う。その真っすぐで曇りのない眼差しが視聴者の涙を誘い、第9話(9月6日)と最終話(13日)は15分拡大。2週連続の15分拡大は、フジテレビ『木曜劇場』の34年の歴史で初めてのことだ。
「自閉症スペクトラム障害の人は体の動かし方が特徴的。また、『感情』と『表情』が一致しないことが多い。喜怒哀楽の表現をうまくできないので、気持ちが伝わりづらく、山崎さんにはあまり表情を変えないよう指導しました」(西脇さん。以下「」内同)
そう話す西脇さん自身も、自閉症スペクトラム障害の症状の1つにあたる「アスペルガー症候群」を抱える。知的な発達は正常ながら、こだわりが強く、場の空気が読めないのでコミュニケーションで問題を抱える場合が多いことが特徴だ。湊もそうした特徴を持っている。
「病気に気づく30代半ばまで、人間関係に苦手意識を持っていました。たとえば、私は好きなクラシックカーの話ならいくらでもできますが、人との会話はそればかりということはないのでつまらなく感じ、その場で浮いてしまうのです。当時は理由がわからず、人間関係がうまくいかないのは“他人のせいだ”と思っていました」
西脇さんのように、生きづらさを抱える人が周囲と協調しながら生きていくにはどうしたらいいのか。
「第1話に、湊が“ぼくは人と違います”と言うシーンがあります。そのように、発達障害を“自覚すること”が大事なんです。私も、自分がアスペルガーで自分の好きな話ばかりしたがるのだと知ると、それを変えよう、人の話を聞こうと心がけるようにしました。それから、気持ちが楽になりました。人間関係が苦手な人は、程度の差はあるものの、発達障害の可能性がある。まずはそれを認め、正しく対策を立てることが重要です」
※女性セブン2018年9月20日号