肺がんの標準治療は手術だが、手術が難しい患者や希望しない人に対する選択肢として局所麻酔で行なう凍結治療がある。CT室で体外から、がんに直接針を刺し、凍結させる治療で、1センチ以下の早期肺がんの場合、再発率はほぼ0%。しかし、2~3センチでは再発率が上がるため考案されたのが、放射線の定位照射と凍結療法の併用治療である。現時点での再発率は5%以下だ。
人間ドックでの肺のCT検査の普及に伴い、数ミリから1センチ程度の超早期の肺がんが発見されるケースが多くなっている。肺がんの標準治療は手術だが、高齢や合併症などで手術が難しい患者や手術を望まない患者に対しては、低侵襲な治療が求められていた。
近年、早期がんの場合は放射線の体幹部定位照射(SBRT)が保険で広く行なわれるようになっている。しかしながら、肺がんにおける放射線照射は1年ほど経過すると肺の広範囲で繊維化を生じ、肺機能が7~8%ほど低下する。そこで肺機能低下が少ない治療法として期待されているのが凍結治療だ。
亀田総合病院(千葉県鴨川市)の呼吸器外科顧問の野守裕明医師に話を聞いた。
「凍結治療は局所麻酔で、CTの画像を見ながら、凍結針を皮膚から肺がんの中心部に刺します。液体窒素で針の温度をマイナス170℃に下げ、がんと、その周囲を凍らせることにより、がん細胞を死滅させます。凍結できる範囲は直径5センチ程度、適応は約3センチまでのがんです。1センチ以下の肺がんであれば、ほぼ100%再発はありません」