今期ドラマの視聴率が好調で、復活の兆しが見え始めているフジテレビ。この秋に、新たに2番組をスタートさせる。その期待と不安について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今月3日、フジテレビが今秋スタートの新番組を発表しました。同局は昨年6月に宮内正喜社長が就任。「昨秋、今春、今秋の3段階を通して改革を行う」ことを発表しました。今秋はその最終段階に当たるだけに注目が集まっていますが、説明会で発表された改編のテーマは「勝負の秋、進化の秋」。昨秋から現在にかけての成果を踏まえつつ、勝負を賭けた新番組を発表したのです。
フジテレビが制作する今夏のドラマは、『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』『グッド・ドクター』ともに2桁超の視聴率を記録しているほか、視聴者からの評判も上々。実は昨秋あたりから「フジテレビのドラマはいい」という声があがり続けていて、今夏に「視聴率という結果も伴ってきた」という状況です。
さらに、『バイキング』『直撃LIVEグッディ!』など帯番組の視聴率もジリジリと上昇。局内では、「あとはバラエティーのみ」というムードになりつつあるのです。そこで今秋は、金曜19時台の『モノシリーのとっておき』、土曜19時台の『さまぁ~ずの神ギ問』を終了させ、それぞれ『坂上どうぶつ王国』と『超逆境クイズバトル!!99人の壁』のスタートを決めたのです。
なぜこの2番組が選ばれ、どんな期待と不安が考えられるのでしょうか。
◆「タレントよりも企画ありき」で勝負
新たにはじまる2番組の共通点は、「家族そろって見られる内容」であること。実際、説明会では、「世代を超えて子供からお年寄りまで、家族そろって見られる、明るく楽しい番組を手掛けていく」という方針が発表されました。
『坂上どうぶつ王国』は、「『ムツゴロウ王国』を作るのが夢だった坂上さんがどうぶつ王国をゼロから作る」というコンセプトの番組。坂上さん本人が「この番組だけは唯一、穏やかな気持ちでやりたい」とコメントし、「好きな芸人ランキング1位」のサンドウィッチマンがレギュラー出演することからも、癒し要素の濃い番組になることが予想されています。
視聴者に「場所探しからはじめて、動物を集め、ふれ合う様子を見せていく」という物語性を感じさせ、「本来テレビが持っていたスケール感と連続性のある番組になるか」が鍵を握りそうです。
一方、『99人の壁』は、3回の特番放送を経てレギュラー化されるクイズ番組。その内容は、「100人の出場者から1人を選び、残りの99人を相手に勝負し、5問連続で正解すれば100万円を獲得できる」というユニークかつギャンブル性のあるクイズ形式が売りの番組です。
1問目は25人、2問目は50人と対戦相手が増え、5問目は99人と対戦することになりますが、すべて得意ジャンルから出題されるだけにチャンスは十分。もともと当時入社2年目の若手社員が社内コンペを勝ち抜き、現在も総合演出を務める番組だけに、MCを個性派俳優の佐藤二朗が務めることも含め、他局のクイズ番組にはない独創性を感じさせます。
「また坂上忍の番組?」「またクイズ番組?」という声があがることは予想していたようですが、それよりも重視されたのは、企画自体の面白さと「家族そろって見られる」ことへのフィット。以前はタレントの人気や実績を軸にベースにしがちだったフジテレビが、「タレントより企画ありき」に変わっていると感じますし、それが期待感につながっています。
◆動物番組、クイズ番組はすでに飽和状態