中国ではまだ土地取引をめぐる「伝説」が生まれている。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国ではたまに、道路建設や地域開発に絡み、頑として立ち退きを拒否した結果として道路のど真ん中に家が一軒、ポツンと取り残されたまま工事が進められるとう、まるで冗談のような事態が引き起こされる。立ち退きを拒否する者も頑固なら、事業を進めようとする側も、いたって強引であるがためだ。
トラブルの結末は、たいてい立ち退きを拒んだ者が圧倒的に不利益を被るというのがオチであった。大規模開発であれば近くに巨大なマンションが建ち、その横に取り残されたわずかに土地は常に圧迫され、陽も射さないため土地の価値が暴落するからである。
道路の真ん中に取り残された家ともなれば、危険で住むに値しない土地となる。だが、安徽省のケースは従来のそうしたケースとは少し違った結末を迎えそうなのだという。
『鳳凰ネット』をはじめ多くのメディアが9月1日付で報じたニュースによれば、同省蕪湖九華中路で立ち退きを拒否して道路のど真ん中に取り残された三階建ての一軒家は、二つの車線を遮ったまま、2010年3月から放置されてきたが、昨年6月に事業主との話し合いが成立。やっと売却が決まったという。
話題を呼んだのはその売却価格である。当時、162万元(約2624万円)だった価格は、およそ7年を経て1100万元(1億7820万円)にまで上がったという。一歩家を出るとすぐに目の前を車が猛スピードで走るという環境に耐えて、ついに手にした利益である。だが、こういうのも決してしょっちゅうあることではないだろう。