毎年4月、全国の国公私立の小学6年生と中学3年生延べ200万人を対象に実施されてきた国語と算数・数学の一大テスト「全国学力・学習状況調査」(通称・全国学力テスト)。約50憶円の国費が投じられるビッグプロジェクトだが、その2017年度版の結果が7月末に公表された。
2017年度のテストでは「保護者アンケート」も実施、こちらの結果から多くのことが読み取れるという。アンケートの対象は、テストを受けた小6と中3の保護者から無作為に抽出された12万人。「両親の学歴」「所得」「就業時間」といった家庭環境や経済状況を尋ね、子供のテスト正答率との相関関係を調べている。たとえば、テスト結果と家庭の蔵書数も関係しているという。
◆家庭の蔵書数が多いほど、子供は算数が得意になる
調査にあたったお茶の水女子大学文教育学部の浜野隆教授はこう話す。
「学校で実施されるどの教科のテストも、『問題文を読むこと』から始まります。いわば活字文化の学校において『読む力』はさまざまな学力に直結します」
つまり、活字と学力は密接に関係しているのだ。蔵書数の多い家庭ほど、読書の機会が多いはずで、その分、子供の学力が高くなるのだ。意外だったのは、「国語」よりも「算数」でそれが顕著だったことだ。教育ジャーナリストのおおたとしまささんが言う。
「算数や理科の問題であっても“日本語を正確に理解し、出題者の意図を読み解く”という能力は必須。さらに、普段から本を読んで書いてあることを理解しようとしている子供は、算数に求められる『論理的思考』能力も磨かれるのでしょう」
また、新聞から情報を得ている親の子供は、ネットやテレビから情報を得ている親の子供より学力が高いことも明らかになった。
“カリスマ国語講師”として多くの受験生を合格に導いてきた予備校講師の吉田裕子先生が指摘する。
「生徒に時事問題をテーマにした小論文を書かせると、ネットニュースやテレビから情報を得ている子はニュースの全体像をつかむのに苦労している印象がある。ネットは断片的な情報しか得られず、テレビも純粋な報道番組は減っています。その点、定期購読している親の影響で新聞を読む習慣のある子供は事象全体を把握し、論理的に話を組み立てる力に長けている。また、新聞を読んで身につく語彙力は、すべての学力の基礎である日本語力に直結します」
※女性セブン2018年9月27日号