平成の世も残すところあと半年あまりとなった。平成最後の終戦記念日の「全国戦没者追悼式」で今上陛下はあらためて「ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」、追悼の意を表された。現行憲法下で即位し、「象徴天皇」のあるべき姿を模索しながら、慰霊の旅を続けた今上陛下のお言葉は、多くの国民の胸に刻まれたことだろう。今上陛下に限らず、歴代天皇の言葉は民の幸せを祈って発せられ、また民を導き、そして日本という国を形づくってきた。文芸評論家の富岡幸一郎氏が、あらためて噛みしめたい今上陛下のお言葉を紹介する。
●平成4年10月23日 訪中時のスピーチ
〈貴国と我が国との交流の歴史は古く、特に、七世紀から九世紀にかけて行われた遣隋使、遣唐使の派遣を通じ、我が国の留学生は長年中国に滞在し、熱心に中国の文化を学びました。〉
「両陛下の中国訪問には反対論もかまびすしかったが、北京の人民大会堂での晩餐会でのスピーチは、歴史を顧みての『両国』の姿を浮き彫りにした。まさに『時』の深さに根ざした文化の本質を呼び起こす言葉であった」(富岡氏・以下「」内同)
●平成13年の誕生日会見
〈桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると、続日本紀に記されている〉
「平成十四年の日韓共催のワールドカップを前にして陛下は、両国の深い歴史的交流を想起させ、反日や嫌韓の偏狭な感情をこえていくべき途を示そうとされた。それは政治による外交の壁をこえる、象徴による交流への強い思いである」