「終活」──。2009年に登場したこの言葉は、人生の“終わり”に向けた準備であり、天寿を全うするための助走を意味していた。ところが、この10年で「終活」は変わりつつある。人生の残された時間と向き合うことで、第2の人生を豊かに過ごすきっかけとなっている。それは、著名人も同じ。「スター錦野」こと錦野旦(69)が語った。
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「何がどこにあるのかさっぱりわからない」
俳優の仲代達矢さんが奥様を亡くされた時にそうおっしゃっていたのですが、それが僕の頭の隅にずっと残っていた。
10年前に義理の母がくも膜下出血で亡くなりました。義母のことは義理の弟が面倒を見ていたのですが、彼も「どこに何があるか分からない」と頭を抱えていました。ところがしばらくして、薄いファイルが置いてあるのに気がついた。開くと、「自分の葬儀代はこの口座に入っていて通帳はここにある」とか「孫のことはここ」とか、すべて書かれていたんです。あとでわかったことですが、遺言状も金庫に入っていました。突然死なのに、です。
義母の一周忌が終わった頃、親族で「あのファイルがなかったら大変だったね」という話になりました。それで65歳を区切りに真剣に終活を始めました。