東大出身の親を持つ子供は学力が高いのだろうか──。『日本人の9割が知らない遺伝の真実』(SB新書)の著者で、慶應義塾大学で行動遺伝学を研究する安藤寿康教授が指摘する。
「子供の学力は遺伝の影響を大きく受けます。世界中の研究をまとめると、知的な能力を示す『IQ(知能指数)』は、およそ50%が遺伝の影響を受けるといわれています。残りの30%が家庭環境、20%が学校や友人など一人ひとりが有する独自の環境の影響を受けることがわかっています」
多くの人間は「努力すればきっと報われる」と信じているが、実は“努力する性格”も遺伝と密接に関係していると安藤教授は指摘する。
「IQと同じように、性格も遺伝の影響を受ける部分が少なからずある。心を穏やかにするセロトニンや、興奮させるドーパミンなど、脳が発する神経伝達物質がどのくらいあるかは、遺伝子レベルの影響が大きいといえます。だから、大雑把な性格の人がいくら神経質になる訓練をしても、性格は変えにくい」
つまり、テストや受験の日に向かってコツコツと努力する性格や、一度問題を解き始めたら途中で投げ出さない粘り強さや持続性は、半分が遺伝の影響を受けているということ。
「よく、『努力すれば必ず成績は上がる』というけれど、その努力ができるかどうかも遺伝が大きく影響するわけで、これぞ“遺伝の不都合な真実”です」(安藤教授)
また、子供の学力にとって大切なポイントは、親の在り方が問われる「家庭環境」が占める割合が30%と非常に大きいことだ。
「両親の与える遺伝と、家庭環境の影響だけで、IQの80%が説明できます。つまり、高いIQとよい教育環境を作れる親のいる家庭に生まれれば、本人の努力にかかわらず、親の影響だけで高いIQになる可能性が高まるんです。だからある意味で、『東大出身の親を持つ子供が東大に入る確率が高い』ことは、残念ながら確かです」(安藤教授)
※女性セブン2018年9月27日号