7月末に「全国学力・学習状況調査」(通称・全国学力テスト、2017年度)の結果が公表された。教育現場では、結果を巡って一喜一憂する一方で、テストに付随して行われた「保護者アンケート」というものがある。
これまで、2013年度と2017年度の2度のみ、実施されたものだ。アンケートの対象は、テストを受けた小6と中3の保護者から無作為に抽出された12万人。
「両親の学歴」「所得」「就業時間」といった家庭環境や経済状況を尋ね、子供のテスト正答率との相関関係を調べたものだ。
この調査から、両親の学歴は子供の学力に影響を与えるものなのかどうかも見えてきた。 結果的には、保護者の学歴も子供の学力と比例する。特に注目すべきは父親よりも母親の学歴だ。
たとえば中3の数学Bでは、父親の最終学歴が「高等学校・高等専修学校」の子供の平均正答率は44.1%で、「大学」になると56.5%。その差は12.4ポイントだ。
しかし母親が「高等学校・高等専修学校」卒だと正答率は43.3%、「大学」卒になると60.0%で、その差は16.7ポイントまで拡大する。精神科医の香山リカさんがその理由を分析する。
「『女に学問はいらない』と言われていた時代は終わり、現代は女性も大学まで進学することが珍しくなくなり、高学歴の母親が増えました。努力して最高学府までたどりついた母親たちはそのことを“成功体験”として誇りに思い、若いうちに勉強に励むことに価値を見出す傾向があります。
そのため、子供に対しても自然と、また心から『勉強は大切だ』『大学で学ぶために努力することはいいことだ』と伝えることができる。結果として子供の学力が向上するのではないでしょうか」
そもそも、伝統的に日本の家庭の子育てでは、母親の影響力が強い。
「“イクメン”も一般的になってきたものの、日本では依然として“夫が外で働き、妻は家を守る”という家庭が多い。必然的に家の中は母親が中心に回るため、子供にとって母親に評価されることは大きな意味を持ちます。そんなバックグラウンドにおいて高学歴で意識の高い母親が登場したことにより、子供への影響力がさらに増したのではないでしょうか」(香山さん)
※女性セブン2018年9月27日号