大物であればあるほど引き際は大切である。その点、このアジア一の富豪の決断は早かった。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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「いま思いついた。平和条約を前提条件なしで結ぼう」
プーチン大統領の唐突な爆弾発言に安倍首相が唖然としたことで話題となった東方経済フォーラム。翌日の日本では「北方領土問題の棚上げ提案」のニュースでもちきりとなったが、同じころ中国のネットで話題であったのは、プーチン大統領と中国の電子商取引最大手「アリババグループ」を率いるジャック・マー氏(馬雲)との会話だった。
ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムの前座として開催された企業家会議の席で、やはり唐突にジャック・マー氏に向き直ったプーチン大統領が、「馬雲、あなたはまだそんなに若いのに、なぜ引退するんだ?」と質問をふったのだった。
これに対して少々面食らった様子のマー氏は、「私は若くはありません。ちょうど昨日(9月10日)ロシアで54歳になったばかりです。起業して19年、まだ別にやりたいこともある。例えば、教育とか公益事業を」と答えた。
それを聞いたプーチン大統領は、「いや、君は若い。私なんて66歳なんだから」といって笑いを誘った。
やり取り自体にニュース性はなかったかもしれないが、ジャック・マー氏がその前日、中国の「教師の日」に合わせて一年後の引退を発表していただけにネチズンたちが反応したということだろう。
面白かったのはニュースのコメント欄の内容だ。長々とロシアの頂点に君臨し続けるプーチン大統領とあっさり辞めるジャック・マー氏との対比が話題の中心かと思いきや、そのほとんどがジャック・マーという人の破天荒ぶりに向けられていたことだ。
「これぞ、馬雲。まったく破格だ」。「宇宙人の智商に地球人は敵わない」。なかには、「中国にはもっとたくさんのジャック・マーが必要だ」と訴える声も。いまだ一挙手一投足が注目されるジャック・マーは、やはり特別な存在なのだろう。